JANP Study
心臓ホルモンが肺がん術後再発を減らすかどうか検証するための研究
(非小細胞肺癌手術適応症例に対する周術期 hANP 投与の 多施設共同ランダム化第II相比較試験)
肺がん転移を防ぐかどうか検証する研究
「がん」にはさまざまな種類がありますが、その中でも「肺がん」は死亡率が日本国内だけでなく、世界で一番高いことが分かっています。実は、「がん」はできた場所にとどまっている限りは死につながることはほとんどありません。死につながる恐れがあり、怖いのは転移することなのです。つまり、「転移を制することはがんを制することが出来る」と言っても過言ではないのです。
これまで、がんの転移を予防する薬の開発はされていませんでした。最近、心臓ホルモンの1つである心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)を手術前後で点滴することで手術後の肺がんの転移を抑える効果があるのではないかと考えられ、研究がなされました。
肺がん手術を予定している患者さんを、「手術のみのグループ」と「心臓ホルモンを手術前後3日間点滴するグループ」の2つのグループに分けて比較してみました。すると、「手術のみのグループ」の「2年後に転移がない」人の割合 (2年無再発生存率)が67%であったのに対し、「心臓ホルモンを手術前後3日間点滴するグループ」では、「2年後に転移がない」人の割合が91%でした。
(NHKきょうの健康より)
JANP STUDYとは
この研究結果についてさらに詳しく調べるために、2015年9月からJANP STUDYという多施設臨床研究がはじまりました。東京都では私たち東京大学医学部附属病院だけですが、全国で10施設(北海道大学、山形大学、山形県立中央病院、国立がん研究センター東病院、大阪大学、大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター、大阪府立成人病センター、国立病院機構刀根山病院、神戸大学)がこの研究に参加します。
臨床研究に参加出来るのは、肺がん手術(標準手術)を予定している非小細胞肺がんの患者さんで、転移のない方です。(肺がんステージのIV期以外)
全国で500人の患者さんの協力を得て、「手術のみのグループ」と「心臓ホルモンを手術前後3日間点滴するグループ」に分けて、「手術して2年後に転移がない」人の割合を比較します。
東大病院での募集期間は2015年10月1日から2017年3月31日となります。
臨床研究の結果において良好な成績が得られた場合、心臓ホルモンの1つである心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が「抗転移薬」として使えるようになることが期待されます。この結果から「肺がん以外のがん」に対しても、転移を抑える効果があるかどうか、さらに研究が進められて行くこととなります。
受診方法
東京大学医学部附属病院 呼吸器外科外来受診
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/patient/outpatient/yoyaku/index.html
予約センター電話番号:03−5800−8630 (受付時間:10時〜17時)
=関連サイト リンク=
国立循環器病研究センター
http://www.ncvc.go.jp/pr/release/007403.html
http://www.ncvc.go.jp/about/excellence/01.html
大阪大学
http://www.thoracic.med.osaka-u.ac.jp/jp/outpatient/janp.html
http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2015/20150601_1
(文責:似鳥純一 Jun-ichi Nitadori)