生体ドナー肺を用いた肺移植(生体肺移植)の実施
【共同研究機関】
東京大学医学部附属病院 呼吸器内科(データ収集・解析)
同 重症心不全治療開発講座(データ収集・解析)
同 循環器内科(データ収集・解析)
同 心臓血管外科(データ収集・解析)
【研究目的】
東京大学医学部附属病院は2014年3月26日付をもって、肺移植実施施設として認可されている。また、すでに脳死肺移植の実施については倫理委員会で承認されております(東京大学大学院医学系研究科医学部倫理委員会 承認番号2415-(1)、承認日 平成25年2月20日)。本申請の目的は東京大学医学部附属病院において、十分な倫理的配慮のもとに生体肺移植を実施することです。
【研究方法】
当院の倫理委員会承認済の生体肺移植実施マニュアルに従い診療を行います。
まず原則として、医師側からは生体肺移植のオファーは一切行いません。年間何例程度生体肺移植が行われている旨は事実として患者、家族にお伝えしますが、詳細な説明やプロセスについては、患者さんもしくはご家族からの希望があって初めて説明を行うものとしています。また、生体肺移植は多くの場合2名のドナーを必要とするので、生体肺移植の詳細な説明は極力ドナー候補者が2名以上、臓器提供の意思もしくは興味を持っている場合に行うように努めております。説明には肺移植レシピエントコーディネータが同席いたします。
「臓器を提供したい」、「臓器を提供したくない」、「移植を受けたい」、「移植を受けたくない」という意思を決定するには、移植医療に関する十分な知識がないと難しいわけですが、一方で患者家族・親族は生体肺移植の選択肢があることや、自分自身が生体ドナー候補になりうることを知ってしまうことで、「臓器提供を行う」、「行わない」という、いずれを選択しても心理的、肉体的痛みを伴う選択を強いられる(もしくはそう感じる)可能性があります。
また生体肺移植の場合ドナーが2名必要であることが多いことから、2名の生体ドナーになり得る個人が、ドナー候補者お互い、また他の家族、親族に捉われることなく全くの自由意思で臓器提供を行うのか行わないのかを決定することは、たいへん困難と想像されます。特にすでに一人のドナー候補が提供の意思を表明されている場合に「臓器提供を行わない」と意思表示するのは、大変な心理的苦痛を伴うであろうことは想像に難くありません。
以上、生体肺移植の存在や可能性を知らせることが患者・家族・その親族に引き起こす可能性のある精神的・肉体的負担を考えれば、生体肺移植の可能性についての説明には慎重にも慎重を期する必要があると考えています。
1)日本移植学会による生体部分肺移植ガイドラインを遵守いたします。また、脳死肺移植の適応患者のうち脳死ドナーの出現まで待機できないと考えられる重症患者さんを生体肺移植の適応と考えています。
2)レシピエント候補患者が受診している医療施設からの紹介を受け、東京大学医学部附属病院において肺移植適応評価のための検査を行います。レシピエント候補患者および臓器提供(ドナー)候補者には十分の説明が行われます。
3)患者が脳死肺移植を待てない重症例と判断され、かつ配偶者または3親等以内の血族より自発的に臓器提供の申し出がある場合、臓器提供希望者(生体ドナー候補)がレシピエントの配偶者もしくは血族関係にあることの確認を公的文書にて行います。
4)生体ドナー候補の医学的適格性評価を行います。生体ドナー候補者には少なくとも2段階に分けた説明が行われます。
5)レシピエント候補および生体ドナー候補者の評価が終了した時点で院内肺移植適応検討小委員会に提示され、適応について審査を受けることになります(患者さん、ドナー候補の方に出席いただいたりするわけではありません)。
6)院内肺移植適応検討小委員会で肺移植手術の適応承認が得られたら、東京大学大学院医学系研究科医学部倫理委員会に、手術実施について倫理的側面より審査を受けます。
7) 同倫理委員会より承認を得た上で、東京大学医学部附属病院にて生体肺臓器提供手術および生体肺移植術を実施いたします。生体肺移植では通常臓器提供者(ドナー) が2名必要であり、それぞれの臓器提供者は右もしくは左の肺葉を提供されることになります。レシピエント手術は、提供される左右の肺葉を同一手術で移植いたします。
8)生体ドナーとレシピエントは、術後も外来で診察させていただきます。
【連絡先】
研究責任者:中島淳
連絡担当者:安樂真樹
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学大学院医学系研究科 呼吸器外科学
Tel: 03-3815-5411(代表)内線:34415
Fax: 03-5800-9156