自己弁温存大動脈基部置換手術

マルファン症候群や、二尖大動脈弁などで見られる大動脈弁輪拡張症に対しては、拡大して破裂・解離の危険がある大動脈基部を人工血管に置換する「大動脈基部置換手術」が行われます。従来は大動脈弁を切除し、拡張した大動脈基部を人工弁付き人工血管で再建し、冠動脈を吻合する「ベントール(Bentall)手術」が標準的に行われてきました。この「ベントール手術」は手術法として確立されていて成績は良好ですが、大動脈弁を人工弁に取り替えることによる弊害と無縁ではいられません。すなわち、「機械弁」を装着した場合には、血液をサラサラにするワーファリンという薬を一生飲み続ける必要がありますし、「生体弁」を装着した場合には、生体弁の劣化から10〜15年以内に再手術が必要になるとされています。

この人工弁にまつわる不便さを回避することが出来る方法として、自分の大動脈弁を温存したままで脆弱な血管(壁)のみを人工血管に置換する術式が開発されました。「ベントール手術」の経験の蓄積とともに大動脈基部の解剖に関する知識が深まったことが、この術式が生み出された大きな要因と言えましょう。

術式は大まかには2種類あり、David法(reimplantation法)と Yacoub法(remodeling法)と呼ばれます。当院では1998年から自己弁温存大動脈基部手術を取り入れ、しばらくはDavid法もYacoub法もおこなっていましたが、2004年頃から独自に考案したDavid変法を実施していて、これまでに80名余りの患者さんにこの手術をおこない、良好な成績をあげています。

マルファン症候群やその類縁疾患であるロイスディーツ症候群などで大動脈弁輪拡張症が疑われる患者さんは、是非東京大学医学部附属病院心臓外科にご相談下さい。