微小肺病変に対するバーチャル気管支鏡ナビゲーションを利用した術前気管支鏡 下マーキング

VAL-MAP法は、早期肺癌などの微小肺病変の切除手術を支援する、バーチャル気管支鏡ナビゲーションを利用した術前気管支鏡 下マーキング法です。2012年より京都大学、2015年7月より当院が主施設となり実施している多施設共同研究です。詳細はこちらをご覧ください。
http://cts.m.u-tokyo.ac.jp/column/val-map

1. 概要
微小肺病変に対する外科的診断・治療に際して行われる術前CTガイド下マーキングは空気塞栓による心筋梗塞・脳梗塞、出血、気胸の合併症が報告されており、部位による制限も多い。これに代わる方法としてCT画像を基に再構成したバーチャル気管支鏡をガイドに、気管支鏡下に染料を用いて術前マーキングを行い、手術補助手段としての安全性と有用性を検討する。また複数のマーキングが可能となる。

2.本研究の目的:バーチャル気管支鏡ガイド下気管支鏡下マーキングの安全性、手術補助手段としての有効性を評価することである。
3.本研究の意義:バーチャル気管支鏡ガイド下気管支鏡下マーキングの安全性、有効性を示し、実用化することで、従来のCTガイド下マーキングの危険性を回避し、また同法の限界を克服してより安全で確実なマーキングを施し、微小肺病変の外科手術の効率をあげることにつながる。
4.試験デザイン:対照群をおかず、本法の安全性と有用性を検討する(介入研究)。本研究は2012年7月より京都大学が開始し、2013年5月より順天堂大学病院、田附興風会医学研究所北野病院が、2013年7月より山形大学、新潟大学、東京医科歯科大学、東京大学、長良医療センター、岡山労災病院、島根県立中央病院、2013年12月より相澤病院、2015年7月湘南鎌倉総合病院、東京女子医大八千代医療センター、産業医科大学、兵庫県立尼崎病院、松江赤十字病院、松阪市民病院が参加する多施設共同研究となった。今回新たに、聖路加国際病院、NTT東日本関東病院、日本赤十字社医療センター、総合病院国保旭中央病院、長崎大学医学部附属病院を共同研究施設として追加する。
多施設での総目標登録症例数 800
試験期間 承認日~2018年3月31日

5.対象者の選択
1) 選択の場:東京大学病院・呼吸器外科で手術を受ける患者のうち、臨床的に術前マーキングが必要と判断される患者。これらの患者は本研究に参加しない場合でも従来のCTガイド下マーキングが必要となるか、本来CTガイド下マーキングをした方がよいが部位の制限のためにそれが不可能であるため、より不確実な手術を受けなければならない患者である。従って患者は本研究に参加することで、マーキングに用いる染料に対するアレルギー反応に関してはCTガイド下マーキングと同等のリスクで、その他の合併症(穿刺に伴う空気塞栓、気胸、出血)に関しては理論上CTガイド下マーキングより少ないリスクでマーキングを受けることができる。
2) 包括基準および除外基準:触知困難な直径2cm以下の微小肺病変、または大きさに関わらず触知困難な、いわゆるスリガラス様(ground glass opacity: GGO)病変で、臨床的に術前マーキングが必要と判断されるもの。マーキングの必要性については主治医の判断に加え、呼吸器外科の臨床カンファレンスで判断する。これらの患者は術式により、以下の2群に大別される。
区域切除群:触知困難なground glass opacity病変等で、解剖学的な区域切除または亜区域切除による摘出が選択される患者群。マーキングは手術の補助として有用であるが、万が一マーキングが不十分であっても、解剖に沿った摘出は可能。ただしその場合、病変を取り残す可能性が高まる。これを防ぐために、拡大した区域切除や肺葉切除が必要となる場合がある。
部分切除群:触知困難で末梢に位置するground glass opacity病変、微小病変等で、非解剖学的な肺部分切除が選択される患者群。マーキングが不十分な場合、摘出が非常に困難となる可能性が高い。その場合、大きな部分切除や解剖を頼りにした区域切除への切り替えが必要となる。

本マーキング法によるマーキングが、①術前予定されていた部位に、②術者からはっきりと認識できるように行いうると確定するまでの最初の3例は、区域切除群の患者に限定する。万が一マーキングが不十分であった場合でも、マーキングが正確にできた場合と比べて切除の正確性ではやや劣るかもしれないが、区域切除であれば解剖学的に切除可能と考えられるからである。この評価は、研究実施者による症例報告書および術中のビデオを、3例が終了した時点で研究グループ内で供覧、検討することで行う。

除外項目:以下の患者を除外する。
1)インジゴカルミンへのアレルギーの既往がある
2)妊婦
3)合併症のため気管支鏡、マーキングができない
4)その他、試験責任(分担)医師が本試験の対象として不適切と判断した症例

*喘息またはその既往は相対的禁忌とし、気管支鏡下肺マーキングを行うことのリスク・ベネフィットを勘案する。リスクがベネフィットを上回ると考えられる場合は、上記③に沿って本試験の対象としない。喘息またはその既往がある患者に気管支鏡下肺マーキングを実施する場合は、呼吸器内視鏡学会安全対策委員会が発行する気管支鏡の手引書、およびBritish Thoracic Societyが発行するガイドラインに沿い、気管支拡張薬の吸入を事前に行う予防措置をとるとともに、術後も慎重な経過観察を行う。

標本規模:多施設共同研究としての総登録症例数が2016年12月末までに560症例であり、今回新たに多施設共同研究としての総登録症例数を800と設定する。

6.介入の方法

気管支鏡の前処置:通常の気管支鏡検査の検査前処置を行う。まず病棟で点滴をとる。必要に応じて、唾液を少なくしたり、気持ちを落ち着かせるためアトロピン、アタラックスPの筋肉注射を行う。気管支鏡検査室に移動し、まず担当医が咽頭・喉頭に局所麻酔薬(4%キシロカイン)の噴霧を行う。
気管支鏡下マーキング:次に検査台に移動し、仰臥位をとり、血圧(マンシェット)と酸素飽和度、心電図のモニタリングを開始する。点滴からドルミカム2-3mg等を静注する。必要に応じて酸素投与を行う。また目に薬剤が入るのを防ぐために目隠しをし、カメラを噛まないようにマウスピースを口に入れてもらう。担当医が気管支鏡を咽頭から声帯、気管、気管支へと、局所麻酔薬(4%キシロカイン)を適宜注入しながら進めていく。あらかじめCT画像をもとに再構成された3Dバーチャル気管支鏡をガイドに、所定の気管支の枝に気管支鏡を誘導し、気管支鏡のチャンネルから挿入した薬剤噴霧用カテーテルを末梢肺に向かって進める。カテーテルが末梢まで到達したかどうかを確認するために透視を用いる。その後、染料(インジゴカルミン)0.5-1mlをカテーテルより注入する。必要に応じてこの操作を繰り返し、複数のマーキングを施す。すべてのマーキングが終了したら気管支鏡を抜去し、終了する。担当医の判断でアネキセートを追加投与する。
マーキング位置のCTによる確認:病棟に帰る前にCT室に立ち寄り、CTを撮影する。これによって、マーキングと摘出する必要のある病変との位置関係を確認する。必要に応じてこのCTをさらに3次元で再構成し、手術イメージをつくる。同時に、可能性は非常に低いが、気管支鏡、染料注入によって気胸や出血などの異常が起きていないかも確認する。これが終了した後、病室に戻って手術を待つ。

7. 検討項目の測定
7.1. 検討項目:観察はマーキング後のCT、術中の所見、および手術による摘出標本において、マーキングの精度、見易さを、手術の効率を検証する。また合併症がおこるようであれば、これについても検証する。
1)気管支鏡下マーキングの安全性:合併症の有無と種類。
2)マーキングの精度:CTで目標としたポイントからのずれを計測する。
3)手術支援法としての効果:マーキングが手術支援として有効に働いたかどうか、①マーキング自体の見易さ、②マーキングがガイドとしてどれくらい手術をしやすくしたか、について術者(=主治医=研究実施者)にアンケートをとる
4) ターゲットの病変が問題なく切除されたか(マージンが陰性かどうか)を病理標本で評価する

7.2.測定項目の記入
本研究の症例報告書を次ページに示す。2013年5月の多施設共同研究開始に伴い、症例報告書を改訂する。研究実施者(主治医)は症例報告書に記載し、研究責任者に提出する。共同研究施設からも同様のフォームの提出を受け、当院で集計、解析を行う。本研究ではいわゆるデータセンターは必要としない。患者から同意が得られた場合、データ管理責任者に報告し、データベースに登録する。データベースは匿名化し各患者に通し番号をつける。個人情報保護のため、患者IDとデータベースの通し番号を連結させたデータシートは別のコンピューターに保管し、それぞれのファイルを開くにはIDとパスワードが必要なようセキュリティに配慮する。これはデータ管理責任者の管理とする。研究が終了し、所定の発表が終わった場合、データは削除する。
7.3.研究記録の管理と保存
研究実施から症例報告書が記載・提出されるまでの時間は2週間とし、研究実施者(主治医)は、この期間内にデータを記載することとする。研究責任者は手術後にデータが適正に記載・提出されているかをモニタリングし、遅延に対しては必要な警告を行う。
研究責任者はデータベースを管理保存する。研究終了5年間は保存するものとし、その後破棄する。データ管理責任者は患者情報の連結に必要なデータシートを同期間保存し、その後破棄する。

尚、先進医療として行われていたVAL-MAPの臨床試験(2016年9月~)は目標症例数を集積しため2017年6月9日をもって新規登録を終了しております。VAL-MAP自体は引き続きこちらの臨床試験に登録することで受けていただくことができます。詳しくは担当医にご相談ください。