インターネットを用いた肺移植術後患者のモニタリングシステムの開発

【研究課題】

インターネットを用いた肺移植術後患者のモニタリングシステムの開発(2020156NI)

【研究機関名及び本学の研究責任者氏名】

研究機関  東京大学医学部附属病院・呼吸器外科

研究責任者 佐藤雅昭・講師

担当業務  データ収集・匿名化・データ解析

 

【研究協力者】

研究機関 京都大学大学院医学研究科医学専攻健康増進・行動学分野

研究責任者 山本一道・客員研究員

古川壽亮・教授

担当業務  インターネットによるデータ入力システムで得られたデータ解析に関する相談・協力

 

研究機関  神戸技術院大学院大学

研究責任者 Muhammad Wannous・講師

担当業務  インターネットによるデータ入力システムの開発に関する協力・相談

 

【研究期間】2020年09月16日 ~ 2025年3月31日

 

【研究目的】

肺移植は他の治療法では対処できなくなった末期の呼吸器疾患に対する最後の選択肢であり、1997年の臓器移植法案の施行以来、本邦でも徐々に増加しています。肺移植は他臓器の移植に比べ、慢性拒絶や肺感染症などの術後合併症のリスクが高く、その5年生存率は世界的には50~60%、日本では約70%であり、他の臓器移植に比べても低くなっています。

肺移植後の長期生存率を改善するためには、自宅退院後も患者の状態や免疫抑制剤等の服薬状況、食事や水分の摂取状況などを細かく把握し、異常があれば素早く対応することが重要です。特に、患者さんが自ら毎日自宅で行う簡易呼吸機能検査は、1秒量の低下が自覚症状の出現よりも先に拒絶反応を検出できるとして、国際学会が推奨し世界的に実施されています。

しかし、肺機能などの検査値の時間的変化の把握や内服薬の服薬状況の管理などは現場の医師および患者さん自身に任されていることが多く、人的・経済的リソースの問題もあり、十分な対応ができているとは言い難いのが現状です。我が国においても、患者さんの手書きの自己管理表が広く用いられていますが、これを外来で収集しカルテに取り込んだとしても、経時的な変化を把握し、例えば呼吸機能のベースラインからの緩徐な低下に対応することは容易ではありません。服薬状況や体重や血圧、その他のデータについても同様の難しさがあります。また、移植施設が限られているため、患者さんが遠方におり来院が難しい点も、肺移植後の経過観察を難しくしています。

近年、海外では肺移植患者に対して電子通信デバイスによる介入が行われており、自己モニタリングおよび服薬アドヒアランス向上に寄与することが報告されています。また、このような電子通信デバイスの使用により、患者さんは在宅で行う身体測定値や検査計測値をその場で入力し、画面上で経時的変化をグラフ等で容易に確認できるとともに、医療者と患者さんの間ではリアルタイムにデータを共有でき、体重の増減・呼吸機能低下・免疫抑制剤服用に関するアラートを組み合わせることで、患者さんの異常にいち早く対応し、肺移植患者の長期予後の改善に大きく貢献できる可能性があります。

本研究では、重症肺疾患に対する肺移植患者の術後フォローアップのために、インターネットを用いた肺移植術後患者のモニタリングシステム(以下、「本システム」と記す)を開発し、これによるパイロット調査を施行し、フィードバックを受けて改善を進めていくとともに、本システムを用いて患者の定期的な自己モニタリングや服薬アドヒアランスの向上、および合併症の早期発見を可能にすることを目的とします。

【研究方法】

<選択基準>

参加予定人数 20人

①組み入れ基準

・20才以上

・当院もしくは他院で肺移植を実施され、外来通院している

・日本語が理解できる

・説明文書を用いて十分な説明を受け、被験者本人の意思による文書同意が可能

②除外基準

・電子通信デバイスの操作が困難

・自分の身の回りの世話ができない

・精神疾患・認知症と判断されている

・同意取得が困難であった患者、担当医が被検者として不適当と判断された

・インターネット通信環境がない

 

<手順>

本研究では、東京大学医学部附属病院に通院している患者さんのうち、適格基準を満たした患者さんに対して、本研究に関して文書による説明と同意取得を行います。参加に同意して頂いた患者さんには、本システムの使用方法に関して説明を受けます。患者さんは、本システムを介して、各種計測値(体重、体温、脈拍、血圧、FEV6、FEV1、SpO2)および内服薬の服用状況を入力していただきます。可能性は低いと思われますが、インターネット通信障害および本システムの不具合により、各種測定値および服薬状況を本システムで入力できない場合を考慮し、本システムを使用している間も、従前の手書きの健康管理表の記入を並行して行っていただきます。研究開始日(同意取得日)から約4週間後の次回外来時に、本システムの操作性や利便性について質的に聞き取り調査を行います。研究開始日(同意取得日)から約4週間後の次回外来時で研究への参加は終了となります。

入力された各種計測値および内服薬の服用状況は、全てインターネットを通じ専用に用意されたサーバー(Google Cloud Platform)上のデータベースに保存されます。患者さんの臨床情報は、インターネットに接続されていない院内のPCのハードディスク上に保存されます。

研究に参加することによる検査の追加はございません。

本システムの評価方法ですが、使用しやすさ、使用するモチベーション、不具合の発生などないかを聞き取り調査いたします。データの精度、欠測についての記述統計量に評価に関しては、各種測定値および服薬状況の欠測値の割合を算出いたします。また、研究参加終了後には本システムの受容性・実行可能性に関する評価をすべく、アンケート(TAM)に回答していただきます。このアンケートも研究開始日(同意取得日)から約4週間後の次回外来時に聞き取り調査と同時に行います。なお、アンケート(TAM)は日本語版が存在しないため、我々が日本語に直訳したものを用います。

本研究の参加・不参加により当該疾患の治療内容・フォローアップ計画が変更されることはありません。

アンケートの回答にともなう時間的負担、および朝夕の各種測定値のおよび内服薬の服薬状況の入力による時間的・精神的負担はありますが、その他に特に予想される有害事象はございません。

氏名などの個人特定可能な情報は、その他の収集されるデータとは別のデータベースに記録され、各患者さんに与えられた研究用IDを付して匿名化されて管理されます。個人情報のデータベースはインターネットに接続されていないPCに保存されます。その他の個人情報を含まない情報を記録したデータベースは、研究用IDで関連付けられて、サーバー(Google Cloud Platform)に保存されます。電子通信デバイスは研究用IDとパスワードによってログインされ、保護された通信でサーバーにデータを送信します。サーバーは独自のIDとパスワードにてログイン可能です。サーバーはGoole Cloud Platformの東京リージョンに属し、Google Cloud Platformによるセキュリティ管理が行われています。また、患者さんの病歴を含む要配慮個人情報データは、東京大学医学部附属病院内からいかなる媒体を用いても院外に出されることはなく、また院内であっても東京大学医学部附属病院に在籍する職員以外の研究者が見ることはできません。